コロナ禍における新しい取り組み

ISSJでは現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受ける難民・移民の方々への支援を拡大しています。

感染拡大が深刻化しはじめた4月上旬より、生活に困窮する人々からの相談が多く寄せられるようになりました。ISSJではテレワークもいち早く導入しましたが、電話相談が相次ぐ状況を鑑み、感染対策を徹底した上で、事務所を1日も閉じることなく対応を続けてきました。

当初は、「家賃の支払いができないかもしれないのだが、大丈夫だろうか」、「自分がコロナウイルスに感染したら病院に行くことはできますか?」、といった、今後の生活への漠然とした不安を吐露する電話が多くを占めました。その後、感染症拡大とそれに続く経済的影響が長期化する中で、食糧支援を求める声が殺到するようになりました。同時に、外国籍の女性からの妊娠・出産に関する相談も増えました。

難民コミュニティへのインパクト
今なお数多く寄せられる相談に共通しているのは、「これまで助けてくれていた友人たちも感染症拡大の影響を受けて失業や減給によって困窮状態に陥ってしまったため、支援を頼むことが難しくなってしまった。助けてほしい。」という悲痛な声です。「申し訳なくてこれ以上はお願いできない」、「心理的にも遠慮をしてしまう」ということを話される方も多くいます。日本人よりも比較的強かったエスニックコミュニティの相互扶助が、非常に危うくなっていることが窺えます。

母子への影響
妊娠中に抱える過度な不安やストレスは、胎児の発達にも影響を及ぼします。情報不足、言葉、費用の面などから、彼女たちが独力で病院や公的な支援に繋がることは難しく、出産を間近に控えて孤立していることも少なくありません。

子どもと教育
2ヶ月間の公立学校の休校措置期間には、家庭学習の比重が格段に高まりました。学習機会のオンライン化も急激に進みました。日本語力が十分ではないために自分の子どもの勉強をサポートしてあげられないことに加え、家庭内にIT環境が整っていない現状に、何もしてあげられない自分のことを「恥ずかしい」と話す母親もいます。コロナ禍を受け、すでに置き去りにされていた子どもたちの教育格差はさらに深刻なものとなっています。

難民を含む移住者家族の場合、保護者には日本での教育経験がなく、従来より「日本語で勉強を見てあげることができない」という課題を抱えていました(図1参照)。インターネット上などでも様々なコンテンツが提供されていますが、彼女らにとって日本語で必要な情報を取捨選択し、使いこなすことは容易ではありません。唯一とも言える学びの場であった学校の休校措置を経て、母親たちの不安はより一層高まっています。

<図1>


このような状況を受け、ISSJでは、新型コロナウイルス感染拡大による緊急支援として、

  • 食糧支援
  • 母子への医療・生活支援
  • 子どもたちへの教育支援
  • 仮放免者へのセーフティネット

という4つの柱で、新しい取り組みを始めています。


①ロヒンギャコミュニティへの食支援

アジア福祉教育財団さまより助成を受け、コロナ禍によって生活に影響を受けた難民コミュニティに食糧支援を実施しています。本事業では、食事について宗教的制限のあるムスリムの人々にお野菜とお米、子どもたちにはハラール菓子を配布します。
お野菜については、千葉県内の農家さまにご協力をいただき、新鮮な野菜を直送しています。
お届けした後の様子はこちらをご覧ください!
お母さんたちのお料理動画はFacebookにて日々更新しております。こちらもぜひご覧ください!

対象者:日本に暮らすロヒンギャコミュニティ
実施期間:2020年6月〜9月

 

② 困窮する外国人と孤立する母子への食糧・医療支援

カリタスジャパンさまより助成を受け、コロナ禍により困窮し孤立する外国籍住民への食糧・医療支援を実施しています。本事業では、とりわけ、母子への支援(出産や子育て)を重視しています。病院確保、出産準備、出産後の各種届出と育児を孤立せずに安心して行えるようにするための伴走支援を行います。合わせて、十分な栄養が取れるようにお野菜とお米を届けます。

対象者:困窮・孤立する母子
実施期間:2020年6月〜2021年3月

 

③オンライン家庭学習支援

みてね基金さまによる助成を受け、難民・難民申請者の子どものオンライン家庭学習支援を実施しています。本事業では、各家庭のオンライン環境を確認し、必要に応じてWiFiルーターやPC等の貸し出しを行うことで環境を確保するところからはじめ、大学生等のボランティアさんと子どもたちを繋ぎます。本助成を受けて環境を整えることで、継続して学習支援を行える体制をつくります。

対象者:点在する難民・難民申請者の子どもと家族
実施期間:2020年7月〜2021年7月

 

④新型コロナ「移民・難民緊急支援基金」への協力

移住者と連帯するネットワーク(以下、移住連)による、新型コロナ「移民・難民緊急支援基金」が設立され、日本政府による特別定額給付金を受け取れない人を対象に、一人3万円の支援を申請することができるようになりました。移住連の会員団体や本基金の協力団体であるなんみんフォーラムの会員団体が、当事者の生活状況などを見極めたうえで移住連に申請し、支援金を届ける仕組みです。ISSJもなんみんフォーラムの会員団体として、数多くの方に支援金をお届けしました。

「これでガスと電気を止められずに済む。」
「支払いを待ってもらっていた病院に、走って持っていきます!」

Have a nice day
well received Aid money 30,000¥ 
so glad this is my first aid money
receiving in my life.
very much appreciate for
delivery in time
tear in my eyes
I would pray for you all that ” The God will protect you from every disaster and pandemic ”
stay healthy and happy family long life.
best regards to everyone in office.
bye for now

(こんにちは。支援のお金3万円を受け取りました。生まれて初めてもらう支援金なので、すごくうれしいです。タイムリーに送ってくれたことに感謝します。涙が出ます。神様が、みなさんをあらゆる災害とパンデミックから守ってくれますように。どうか健康で、家族が幸せで、長生きしてください。みなさんにもよろしく。さようなら。)※日本語訳はISSJが作成


ISSJでは引き続き、外国につながる子どもや家族に寄り添い、彼ら彼女らの言葉に耳を傾けながら、必要とされる取り組みを続けて参ります。

皆さまのご支援ご協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。