社会的養護下におかれた外国籍児童

5月10日、厚生労働省による委託事業として、「児童養護施設等における外国籍等の子ども・保護者への対応等に関する調査研究報告書」が発表されました。全国の乳児院・児童養護施設等にアンケート調査を行って実態を把握すると共に、検討委員会が分析・提言を行っています。委員会には、ISSJ評議員の南野奈津子東洋大学教授も参加しています。

調査結果によると、約4割強の施設に外国籍児童が入所しています。外国籍の子どもに関する(施設の)課題は、「子どもの文化・宗教的背景を踏まえた配慮事項が分からない(食事、行事等)」、「施設での日本語のコミュニケーションに支障がある」など。保護者に関しては、「日本語のコミュニケーションに支障がある」、「支援方針等重要な事項の相談・調整が難しい」「子どものアセスメントに必要な情報収集が困難」などがあるようです。

子どもが抱える困難として、「自国で身につけてきた文化・風習が周囲から異質なものと捉えられてしまう。これはアイデンティティ形成とも絡み、結果として孤立感とつながる可能性がある。またこうした課題が自己肯定感の低さへとつながっていく。」と指摘されています。その上で、「子どもたちは、母親の DV 被害を目撃する、もしくは直接虐待を受け施設入所に至っているという現実」があります。

保護者、特に母親については、DV被害、経済的困窮を基盤とする社会的孤立、言葉ができないために就労に結びつかず、子どもへの虐待等を引き起こしてしまう、というパターンが指摘されました。さらに、「耐えずつきまとう不安を基盤とし、日本での文化面での差異や言葉が通じないなかで、支援者とも関係構築は難しく、同時に、言葉の壁により、困難解決への情報も得られず、日本の制度もなかなか理解できない」という状況が指摘されました。

ISSJでは、これまでも外国籍母子の支援を重視してきました。子どもの育ちを支えるためには、家族、とりわけ母親をしっかり支援していく必要があります。また、施設や児童相談所とも連携し、情報提供や手続き支援などを実践しています。(児童相談所が「外国籍等の子ども・保護者の支援にあたり連携している機関 」として、ISSJもあげられています(P.80) )

本報告書では、調査結果を受けて提言がなされ、その中には多文化や在留資格に関する研修の必要性もあげられました。ISSJでは、これまでの実践と社会的ニーズを踏まえ、今年度も支援者向け研修を企画しています。同時に、多様な機関と連携し、外国籍・無国籍児童の福祉と家族支援を実践していきます。

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