国際養子縁組の最近の傾向とISSJの援助
日本国内で生を受けた未成年者を対象とする、国際養子縁組の援助は、ISSJの重要な業務の一つです。国際養子縁組とは、養親と養子の国籍が異なる養子縁組を意味します。この国際養子縁組の申請者は、日本に在住する外国人夫妻や、日本から養子を迎えることを希望する海外在住の外国人夫妻がほとんどでしたが、近年では、日本人夫妻や、配偶者の一方が日本人の夫妻からの申請も増えてきています。日本に古くから存在する養子縁組は、「家」を継承するために子どもを迎えたり、実親が生活苦のために子どもを他家に養子に出すなど、子どもの福祉よりも、養親や実親の希望や事情が優先されていたことは否定できません。しかし、ISSJの国際養子縁組は、子どもの福祉を最優先に据えています。
ISSJには、実母やその家族、児童相談所、産婦人科病院、その他の関係機関から、養子縁組の相談が持ちかけられます。子どもにとっては、実親の下で育てられるのが、一番幸せであることは言うまでもありません。子どもにとって、養子縁組が最善の方法であるかどうかを判断するために、ソーシャルワーカーは実親やその関係者との電話相談、面 接、家庭訪問、施設訪問等を重ね、児童調査を行います。最初は独りで問題を抱え途方にくれた実母も、ソーシャルワーカーの働きかけで、社会資源や家族からの支援が得られるような環境が整備されると、自ら子どもを育てる決心をする場合もあります。
ISSJは、児童調査の結果、その子どもにとって、養子縁組が最善の方法であると判断した場合にのみ、養親候補者とのマッチングを行います。一方、養子を希望する申請者には、必ず、オリエンテーションに参加してもらい、ISSJが実施する養子縁組について、正しく理解をしてもらうように努めています。また、申請者には、初回面 接、個人面接、夫婦面接、家庭訪問をもとに家庭調査を行います。家庭調査では、申請者の動機や希望を引き出しながら、どのような子どもをこの夫妻の下に託することが、その子どもの福祉につながるかを導き出していきます。
日本人の申請者が増える中で、ISSJは、申請者の夫妻のみならず、その両親やきょうだいを含めた親族にも、養子援組についての理解を促すことが重要であると感じています。なぜなら、親族の中には血縁のない、しかも外国籍の子どもを養子として受け入れること、また、その子どもが将来、「家」を継承することを快く思わない人もいるからです。まだまだ、子どもの福祉を目的とする国際養子縁組が馴染みのない日本社会では、子どもが申請者だけでなく、その両親やきょうだいからも温かく迎えられ、養子に実子と同様な家族環境が保障されるような受入れ環境を整えていくことが重要です。そのため、ISSJは申請者に対し、早い段階から家族と養子を迎えることについて、積極的に話し合う機会を設けるように勧めています。それは、申請者が自身の家族と向き合うことで、子どもを養子に迎えるために生じうる確執を十分に認識し、そうした状況の中でいかに子どもを守っていくか、「親」としての心構えを築いてもらうと同時に、養子縁組を巡る家族間の問題の発生を最小限にとどめることができると考えるからです。また、ISSJは申請者に対し、養子への真実告知についても、子どもの年齢に応じて、早い時期から始めることを勧めています。そのためには、家族全体が養子縁組を前向きにとらえ、子どもがいつでも実母について質問できるような、自由な環境を整えておくことが大切になります。日本人夫妻が外国人の子どもを養子に迎えることは、まだまだ珍しく数少ない事例です。ISSJは、1人でも多くの子どもが日本の社会で、幸福で安定した家庭生活が営めるよう、今後も国際養子縁組の援助を続けていきたいと思っています。
一度は子どもを養子縁組に出そうと考えた母がISSJの援助で自ら育てていこうと歩み始めたケース
ISSJは設立以来国際養子縁組の援助を続けており、厚生労働省からも国際養子縁組の援助が必要なときは当事業を利用するようにとの通 達が出されている関係から、このような援助が必要な場合、児童相談所、福祉機関、病院などからケースが紹介されてくる。ISSJは実母と面 接をして、国際養子縁組の十分な説明をし、理解してもらう努力を欠かさない。実母は、出産後の混乱の中で、子どもを連れて自宅にもどることが出来ない状況にあるとき、養子縁組を漠然と考えている。
ISSJは、ある病院から、出産直後の日本人実母が国際養子縁組を希望しているので援助して欲しいとの依頼を受けた。実母は未婚で母となり、実父は日本人で行方不明である。ISSJのワーカーは実母を病院に訪ねた。面 接を通じ、彼女は様々な理由から養子縁組への決心をしかねており、心が動揺していることを感じた。面 接を重ねるにつれて、養子縁組を望むのは実母でなく、祖父母であることが見えてきた。娘が未婚の母になったことで、自分たち家族が世間でどのような目で見られ、どのような受け止め方をされるか世間体を大変気にしていた。
ワーカーは、実母の混乱する気持ち――愛する者を失うこと、罪悪感、悲しさを考えるとき、彼女が辛い思いをすることは、ごく自然なことだと説明し、彼女の気持ちはよく理解できると伝え、急がずに子どものために最良の方法を選択することが大切だと伝えた。さらに、退院まで気持ちの決心がつかなければ、児童相談所を通 して乳児院に委託する方法もあることを教えた。ワーカーは将来、養子縁組に決心がついたときは全面 的に援助するし、乳児院への措置手続きも側面から支えるとも伝えた。実母は安心し自ら児童相談所への連絡を取り、子どもは病院から乳児院に無事委託された。ワーカーは乳児院まで実母に付き添った。
以後、実母とワーカーとの間に何回かの文通を通しての接触があった。実母は手紙で、養子縁組を望む両親に自分の決心を伝えることに悩む気持ちを率直にワーカーに伝えた。実母に「勇気を持って伝えることは大切なことだ。」と助言した。無理をしないで自分の気持ちを確認しながら日々を過ごすようにと伝えた。
実母は苦しみながら、子どもを引き取るための環境作りを、着々と進めているなかで。実母は「一人で頑張り過ぎた。」「自分の力以上のことを考えていた」ことに気付き、一方両親は娘が一人で悩み迷っているとき、娘の立場に立って彼女を精神的に支えてやらなかったことを反省し始めていた。実母に両親の愛は伝わり「生んでよかった。」「ひとりで子育てをすることは様々な困難があるが、逃げないで、乗り越えて生きたい。」「周囲から何といわれても子どもを守れるのは私しかいない。」子どもが大きくなったとき子は母のことをどう思うか分からないが精一杯のことをしていきたいと決心を語った。生活がもう少し安定するまで、子どもはしばらく乳児院で世話してもらうけど、出来るだけ会いに行きミルクを飲ませ、おしめを替え、遊び、親子で貴重な時間を過ごすよう努力していくと、うれしそうにワーカーに伝えた。現在、実母は保母として、新しい生活を始めた。