難民認定申請者をめぐる最近の動向
−欧州4カ国における難民認定申請者施設調査から−
 

 

ソーシャルワーカー 大場 亜衣


欧州諸国における難民認定(庇護)申請者の受入れ状況について

日本においても近年、難民認定申請者が増加するなか、2002年5月に発生した在瀋陽総領事館駆け込み事件を契機に、日本国内における難民・難民認定申請者の取扱いについて、世論の関心が高まった。特に難民認定申請者については、不安定な法的地位 に加え、経済困窮や住居確保の困難などの窮状が認められている。こうした難民認定申請者に対し、政府による支援策を求める気運が高まってきている。このような状況を受けて、難民認定申請者に対する支援体制のあり方を検討する際の資料とするため、アジア福祉教育財団 難民事業本部は「英国、フランス、ベルギー、ドイツにおける難民認定申請者のための受入れ施設等に関する海外調査」を主催した。2003年1月26日から2月7日の日程で実施されたこの調査に、ISSJはソーシャルワーカー1名を派遣した。調査団は欧州4カ国における難民認定申請者への生活支援について、難民認定申請者の受入れ施設の視察、調査国政府及びNGO等の難民認定申請者支援団体との意見交換を中心に調査を実施した。調査内容の詳細は「欧州諸国における難民認定(庇護)申請者のための受入れ施設等調査報告」にまとめられている。

欧州4カ国及び日本における難民認定申請者・認定数
出典:UNHCR (2002年6月7日現在・暫定数)、法務省資料
国名   申請者数 認定数 人道配慮 受入総数
フランス 一次審査 47,291 5,049 - -
異議申立 26,140 2,380 - -
再申請 1,368 2,274 - 9,703
ベルギー 一次審査 24,549 898 - -
異議申立 1,479 259 - 1,157
イギリス 一次審査 71,690 10,955 19,505 -
異議申立 82,125 8,155 - 38,615
ドイツ 一次審査 88,287 17,547 2,395 -
異議申立 30,019 5,172 988 26,102
日本 一次審査 353 24 67 -
異議申出 (非公表) - 2 - 93


欧州4カ国における難民認定申請者に対する支援のあり方に関して、特に注目されたのは、(1)申請受理後、速やかに社会福祉・生活支援が開始される制度となっている、(2)難民認定手続と社会福祉・生活支援の提供は別 省庁の所管である、(3)申請者のニーズ(食事、住居、医療、通訳、子女教育等)に応じて、必要な支援が提供されている、(4)申請者支援の予算は政府(地方自治体)が措置しているが、現場での直接支援は政府等と契約をしているNGOが実施している、という点である。

欧州諸国では、9.11の同時多発事件の影響や不況、高失業率などの社会不安から、外国人政策の転換を迫られており、各国の難民政策も変革期に差しかかっている印象を受けた。しかしながら、欧州諸国の難民受入れに関する取り組みは、我が国のそれとは大きく異なっていることは上記の統計からも明らかであり、国際基準に照らし合わせれば、日本の難民受入れ政策の立ち遅れは否めない。


フランス難民行政についレクチャーを受ける


フランスの難民申請者のための宿泊施設


日本国内の難民認定制度と難民及び難民申請者保護政策について

日本が難民条約に加入し、入国管理及び難民認定法を制定して21年が経過したこの春、政府は「出入国管理及び難民認定法改正案」を国会に提出した。改正案には、(1)日本に入国後6カ月以内に難民認定申請をしなければならないという「60日ルール」を撤廃する、(2)「仮滞在許可制度」を設け、一定の条件を満たした申請者には日本に滞在することを認める、(3)仮滞在許可を受けていない人も、審査期間中は強制送還をしない、(4)難民と認定された上で、一定の条件を満たす場合には、「定住者」の資格を認める、などが挙げられている。

現行法では、「難民認定手続き」と「退去強制手続き」はそれぞれ独立した手続きとして、並行して進められる。そのため、難民申請をしても在留資格がなければ、不法滞在者として扱われ、退去強制手続きのため、当局に収容されてしまうこともあった。難民認定申請中の者を収容することは、人権上問題であるとの批判が絶えなかったが、改正案では、「日本入国後6カ月以内の申請であること」、「迫害の恐れのある国から直接入国したこと」等の一定の条件が認められれば、仮滞在許可が与えられ、難民認定審査期間中は退去強制手続きが停止される。また、仮滞在が不許可になった場合には、従来どおり収容はありうるものの、審査機関中には強制送還はされないことになる。今回の改正案では、不服申し立ての仕組みについての見直しは先送りされている。難民認定処分に対する不服申し立ては、不認定を決めた法務省入国管理局に再度申し立てる仕組みとなっており、外部から分かりづらく、不服申立制度が有効に機能していないと指摘されている。今後も、不服申立制度の見直しが引き続き検討され、改善されることが期待される。

難民認定申請者に対する保護措置は、外務省において予算措置が講じられている。外務省が難民事業本部へ委託している難民認定申請者保護事業では、生活に困窮している難民認定申請者に対し、12歳以上の大人一人につき日額1,500円、12歳未満の子ども一人につき日額750円の生活費が支給されている。また、宿舎借料、宿舎入居費、医療費、各種公的手続き手数料等も必要に応じ、実費支給されている。保護事業の平成15年度の総額は、4,600万円(昨年度予算は2,900万円)に拡充され、本年度からは難民認定申請を対象とするシェルターが設置、提供される予定である。

「出入国管理及び難民認定法改正案」の国会への提出、外務省による難民認定申請者を対象とするシェルター設置など、難民認定申請者をめぐる法律・施策の拡充は、歓迎すべき動向である。今後、難民認定申請者が安心して審査を受けることができる生活環境の確保を実現するにあたり、政府と協働のもとNGOが果 たすべき役割は大きくなると予想される。ISSJは難民認定申請者の生活支援を担う一団体として、更なるキャパシティ・ビルディングが求められることになる。