第8回児童福祉サービス世界会議 &
第3回フィリピン国籍児を養子として迎えた家族のための
世界会議に参加して

 

ISSJソーシャルワーカー 日原智秋
2005年8月10日から16日にわたりフィリピン共和国マニラにて開催された 児童福祉サービス世界会議 (8th Global Consultation on Child Welfare Services))と第3回フィリピン国籍児を養子として迎えた家族のための世界会議(3rd International Conference for Adoptive Families of Filipino Children)に参加しました。両会議ともフィリピン共和国の社会福祉開発省(DSWD)、国際養子縁組審議会(ICAB)、そしてフィリピン児童保護機関協会(ACCAP)の3グループが、世界各国の児童福祉における専門職、実践者といったサービス提供者、そしてサービス受給者が有する経験や情報を分かち合う場として2年ごとに開催している会議です。今回の両会議には、NGOあるいは政府機関に関わるソーシャルワーカー、児童施設に関わる保育士や聖職者、司法に関わる裁判官や弁護士など多岐にわたる専門職、そしてフィリピンの子どもを養子とした各国の家族と養子本人など21カ国の代表者およそ250名が参加しました。参加国は、アメリカ合衆国・カナダ、オーストラリア・ニュージーランド・ネパール・カンボジア・香港・日本、ベルギー・デンマーク・英国・アイルランド・オランダ・ノルウェイ・スペイン・スウェーデン・フィンランドなどでした。





第8回児童福祉サービス世界会議


施設の子ども達による歌と踊りのパフォーマンス
この世界会議は8月10日から12日の3日間にわたり開催されました。「プライドを持って過去を振り返り、自信を持って前進しよう」(Looking Back with Pride, Moving Forward with Confidence)という副題がついた会議の目的は、国際養子縁組における強みと弱さを見極めること、また次の10年に向けた方向性を導き出すことで、次のような事項について積極的な議論が行われました。これまでの国際養子縁組に関する統計の発表、昨年から新たに始まった米国での夏季ホストファミリーキャンプの内容、実親探しなど、国際養子縁組に係るいくつかの問題点を集中的に討議する分科会、世界人口分布推移からみた国際養子縁組の持つ重要性などです。また、マニラ近郊にある国営、民間による児童擁護施設への訪問も行いました。 この会議に参加し、大変効率的かつ有効的に計画された会議にまず感銘を受けました。フィリピンの方々の明るさ、陽気さが会議を一層魅力的なものにしていたことも印象的でした。各発表とそれに伴う討議から、個人的に次の2点が主要な問題点と感じました。1つは、フィリピン国内での手続きの効率の悪さです。例えば、養親と養子のマッチングまでにかかる期間が長すぎるという議論がありました。さらに裁判所が、実母に遺棄された子どもを法的に遺棄児と認定する場合に1年近くかかることも挙げられました。これらの問題は長いこと養子受け入れ国から指摘されているようですが、ソーシャルワーカーの多忙さや各裁判官による見解の相違などにより、今回の会議でも明確な対応策は提示されなかったように感じます。

もう1つは、国際養子縁組の推移により新たな問題への取り組みの必要性です。例えば、国際養子縁組プログラムの初期に託置された養子が20、30代に達し、実親探しの希望が増えてきていることから、親探しに関し新たに養子や実親への最適なソーシャルワークが求められています。DSWD、ICABは今後、経験豊かな国やワーカーからの提案をもとにワーカーへのトレーニングを充実させる必要性を説いていました。この問題についての具体的な方策は、次回会議に持ち越されました。


第3回フィリピン国籍児を養子として迎えた家族のための世界会議

フィリピン人としての絆を分かち合う(Sharing Filipino Ties)という副題がついたこの会議は、国際養子縁組にて海外に新しい家族を得た養子、そしてその養親がそれぞれの体験や現在の活動について情報を活発に交換し合う場でした。8名の養子、そして3名の養親がそれぞれ発表を行いました。養子の年齢は15歳から32歳と幅広く、姉弟共に養子となった発表者、普通は5,6歳で養子になるのですが、12歳という高い年齢にて養子となった発表者など背景は文字通り十人十色でした。今回の壇上に立った実に8割の養子が米国に養子として渡っています。


フィリピンICABとDSWDのスタッフ
最も興味深かったのは、もちろん養子本人の視点から見た国際養子縁組でしたが、一つひとつの体験がそれぞれ異なっており、国際養子縁組の個別性を改めて痛感しました。5歳時に幼い弟とともに養子として米国に渡った女性は、養母との葛藤、自らが有する学習障害について赤裸々に語りました。彼女のスピーチの中で数回繰り返された、「私はとにかく養母に1人の個人として受け入れて欲しかった。ありのままの私を受け入れて欲しかった。」が胸に強く響きました。しかし養子の中には大きな葛藤もなく新しい家族・文化に適応している者も少なくありませんでした。またフィリピン国内で養子となった30代女性が、「私は幼い頃、フィリピンという養子縁組に対して差別的な国ではなく、米国など理解のある海外に養子に行けたらいいと何度も願った。」という発言は、国内での託置が養子にとって最適であるという意見を再考させるものとなりました。

今回2つの会議に出席し、国際養子縁組に携わるソーシャルワーカーとして自らのワークを見直す良い契機になりました。またさまざまな国の専門職、養子本人、そして養親と交流を持てたことは大変貴重な体験であり、今後の仕事にぜひ活かしていきたいと思います。