1993年ハーグ条約に守られる国際養子縁組
ISSJ事務局長 大森邦子
ISSJは半世紀に及ぶ現場経験から、わが国がハーグ条約「国際養子縁組に関する子の保護及び国際協力に関する条約」の批准をすることを強く願っています。
日本はハーグ国際私法会議構成国ですが、いまだハーグ条約1993年「国際養子縁組に関する子の保護及び国際協力に関する条約」を批准しておりません。それどころか日本には国際養子縁組法すらありません。欧米の養親希望者たちは日本から養子を迎える理由として、法規制がないので、簡単に子どもを養子縁組できることをあげているのです。現在わが国で最も懸念される問題点は、養子が海外の養親の元に行く場合、日本政府のチェックは全く必要無いこと及び、養親候補者に養子を斡旋するとき多額の金銭を養親候補者に請求する斡旋業者が存在していることです。欧米の養子縁組希望者や斡旋業者の間で、日本では国際養子縁組の名のもとに人身売買が行われているといわれる 所以です。国内の養親に斡旋される場合は、養親候補者が日本の家庭裁判所に養子縁組の申請に行くのは、すでに子どもが斡旋された後なので、家庭裁判所で養親から斡旋業者にいくら支払われたかという事実を把握することは不可能です。しかも、わが国がすでに批准している国連の「児童の権利に関する条約」第21条dにうたわれている「 国際的な養子縁組において当該養子縁組が関係者に不当な金銭上の利得をもたらすことがないことを確保するための適当な措置をとる(政府訳)。」の不当な金銭上の利得を、例えば斡旋料が不当かどうかの判断基準や不当であるとなったときの罰則規定がありません。実父母からの養育が受けられない子ども達が新しい父母の元へお金で買われていくようなことは、どのような事情があるにせよ決して許してはなりません。
在米の夫婦は『都知事が認定したある斡旋業者に養子縁組を希望したところ、子どもが欲しかったらまず500万円振り込め』と言われた。高すぎるというと障害のある子なら安くするといわれたのですぐに断ったが、その斡旋業者は、障害のある子どもは養子とした後も障害のない子に比べると色々と経費や手間がかかるので、それを考慮したともっともらしく説明した。子どもの立場で考えると、人生の最初から障害があるのでその存在は社会の負担が多いというレッテルを貼られてしまうことになり、子どもの人権はまったく無視されている。日本では障害児と健常児では養子縁組斡旋料が違うのかと問い合わせてきた。
また、日本から養子をもらった在米米国人は『数年前に日本の斡旋業者から養子をもらった。当時4万ドル払った。友人の中には6万ドル払った人もいる。先進国で、経済大国といわれる日本から最近米国へくる養子の数が増えているようで不思議だ。』と言った。
米国の斡旋業者は『日本から養子を迎えるときに必要な書類は最小限でほとんど何もない。日本は養子に関する法律、特に国際養子縁組に関する法律は何もないので、日本から養子をもらう場合日本政府から斡旋団体が資格を取る必要はない。ほとんどの国は国の認可が必要となっているが、日本にはそういったものが無く、とてもルーズであると感じている。』と話しています。
養子斡旋をする場合は一歩間違えば子どもは商品化してしまうので、政府として何等かの基準を設ける必要があります。また国際養子縁組は国境を越えて養子縁組の斡旋をするものですから、当事業団のような国(厚生労働省)から直接認可をされた機関で行うことが望ましいと考えます。子どもを養親に引き渡したらそれでサービスが終るのではなく、その後も養親の国で適応できるかどうか、さらにその国の法律に則った手続きが完了したかどうかの確認も必要です。それゆえ各国とのネットワークを持ち、継続してサービスができる体制を持つ機関で行うことが求められます。子どもの身分事項を記録したファイルは、実母探しなどへの対応のために半永久的に保管される必要があります。国際養子縁組が、人身売買の隠れ蓑にならないように、一日も早い国際養子縁組法制定及び、ハーグ条約1993年国際養子縁組に関する子の保護及び国際協力に関する条約の批准を願っています。