人身売買-国際間の人的交流の陰で
米国務省は平成16年6月14日に世界の「人身売買に関する報告」をまとめました。この報告では各国を
1. 人身売買防止のための最低基準を満たしている国
2. 基準を満たしていないが、努力をしている国
3. 基準も満たさず、努力もしていない国
に分類しています。ほとんどの先進国は@に入っていますが、残念ながら日本はAに分類され、昨年同様今年から導入した【監視対象国】のリストにも入っています。さらに日本の実態について東欧や中南米からの女性が就労や売春目的で人身売買の被害にあっているが、その背景に暴力団が介在していること。既存の法律で取り締まっているが、懲罰適用が軽いことを指摘しています(6月16日産経新聞参照)。ISSJが対応しているケースからすると、アジアから就労目的で来ている女性たちも被害にあっていると思われます。
近年海外から日本に入国する人が増えています。平成15年度の外国人入国者数は5,727,240人です。そのうち外国人登録をして日本に生活している外国人は1,915,030人で、わが国の総人口に占める割合は1.5%になります。外国人が日本に滞在するために必要なビザには外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、文化活動、短期滞在、留学、就学、研修、家族滞在、特定活動、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者と数多くあります。在住外国人の出身地はアジアが圧倒的に多く74.3%の1,422,979人になります。続いて南米の17.9%、343,635人、北米3.3%、63,271人、ヨーロッパ3.0%、57,163人、オセアニア0.8%、16,076人、アフリカ0.5%、10,060人と続いています。そして無国籍の人が0.1%、1,846人います。年齢でみると20代と30代が圧倒的に多くなります。続いて40代、50代、10代、9歳以下、70歳以上と続きます。女性が53.8%の1,031,006人、男性が46.2%、884,024人です。
しかしこうした日本在住外国人の中には、本来の目的に添って生活している人ばかりではありません。日本にきたときは正式なビザをもって入ってきたにも拘らず、滞在期間が過ぎても帰国しないで、不法滞在(超過滞在)をしている人がいます。現在約25万人の不法滞在者がいるともいわれていますが、その実態は不明です。その多くは経済的な理由で帰国を拒否しています。日本から仕送りすることで本国の家族が貧困から救われるのです。弟妹が学校に行く費用を仕送りしたいとか、家を建てる費用を稼ぎたいとかその理由はいろいろですが、現実には経済的な理由が大きいと思います。しかし中には人身売買された女性たちも含まれております。
入管協会発行の国際人流第209号に掲載されている国際移住機関(IOM)の中山東京事務所長の特別 寄稿によると、『今日国際的な人口移動のうち、紛争や自然災害などによる難民・避難民や永住移民、留学生・研修生などを除いた「経済難民」と呼ばれる人々が約8000万人いると推定されている。アジア地域にはフィリピン、バングラデシュ、スリランカといった主要な労働力を送り出す国が集まる一方で、日本や韓国、NIES(の新興工業国家群)地域への労働力の移動も増加傾向にあり、世界的な人の移動の中心を形成している。アジア地域における人の移動の大きな特徴は、女性移民の占める割合が、非常に高いことである。例えばフィリピンは2000年に有期雇用契約による新規の移住労働者約25万人を送りだしたが、そのうち実に70%が女性で占められていた。これらの女性の大部分が「ドメスティック・ヘルパー」などと呼ばれる家事労働者や「エンターテイナー」といったきわめてインフォーマルな職種に集中しており、性差別 や搾取の対象になる危険性と常に背中合わせの労働環境にあることが常々指摘されている。』こうした状況のなかでトラフィッキングの問題が注目されてきています。
再び中山東京事務所長の特別 寄稿では『最も代表的なトラフィッキングの定義は国連国際組織犯罪防止条約の人身取引議定書のものであるが、それによれば人身取引―トラフィッキングとは「搾取の目的で、暴力もしくはその他の形態の強制力による脅迫若しくはこれの凝視、誘拐、詐欺、欺もう、権力の乱用若しくは弱い立場の悪用または他人を支配下に置く者の同意を得る目的で行う金銭若しくは利益の授受の手段を用いて、人を採用し、運搬し、移送し、蔵匿し又は収受すること」を指す。』『例えば、「外国でよい仕事を世話してやる」と斡旋業者に声をかけられてA国に渡り、その後パスポートを没収され、「移動の自由」も拘束されて、正当な報酬を受けることなく労働を強要された場合、仮に被害に遭った女性が就労目的で不法滞在することを承知の上で斡旋業者の仲介を受けていたとしても、トラフィッキングの被害者とみなされる。アジア地域における女性移動労働者の存在とトラフィッキングは、いわば硬貨の両側のような関係にある。人間にとって『移動の自由』は最も基本的な権利であり、歴史を紐解けば華僑から南米の日系人に至るまで、経済的な動機に基づく移住の実例は枚挙に暇がない。だが、女性が家計を助けるために国外に出稼ぎに行く「地域的な文化」が形成されつつある中で、インフォーマルな職種に集中する女性移民に対する需要と組織犯罪の関与する国際的なトラフィッキングネットワークの形成という条件が重なり合い、トラフィッキングの被害者を生み出す土壌を形成している』と指摘しています。さらに特にフィリピン、タイでの経験とアジア地域の移住問題の特質から『第一に人の移動をもたらす要因の多様性。最終的には国境を越える決断を下すのは移民個人であるが、その意思決定プロセスには政策レベルの要因から国際的な移住ネットワークの役割や文化的な背景に至るまで、様々な要因が複雑に絡まっているしたがって、移民個人への直接支援、一般 社会への啓蒙、政府機関やNGOの強化、地域協力の推進といった個別の活動を特定の対象地域の現状に合わせて柔軟に運営しつつ、相互的な関連性を確保することが重要である。』と提言されています。
日本政府は、この様な人身売買を防止する世界的な動きの中で、「人身取引対策行動計画」案を12月4日、明らかにしました。これまで、日本には国際的な人身売買を直接取り締まる法律がないことに加え、在留許可のない人身売買の被害女性が容疑者として扱われ、不法滞在で強制退去になるケースが多かったのです。この案では、刑法に人身売買罪を設けてブローカーら加害者への罰則を強化することや、「人身売買の隠れみの」といわれてきた偽装結婚対策や外国人歌手やダンサー向けの「興行ビザ」の発給基準を日本政府が「芸能人」としての能力を審査するなどを盛り込んでいます。
今後IOMの活動はますます重要となってまいります。
ISSJでも、日本が【監視対象国】の汚名を返上し、真の文化的な先進国となるよう、活動を進めてまいります。